アイデアマンからプロジェクト責任者に進化する方法

アイデアマンからプロジェクト責任者に進化する方法

「アイデアには何の価値もない(ラリー・ペイジ/Google創業者)」

 

最初にこの言葉を見たときには「随分と酷いことを言うな。アイデアだって価値があるじゃないか」と思いましたが、事業を進めていく内にこの言葉の納得性が増してきました。

私の体感では

「プロジェクトを立ち上げ、PDCAを回しながら完結まで持っていくことの事業インパクトを1000」とすると、

  • プロジェクトに参加し、完結に協力することの事業インパクトは100〜300
  • プロジェクトを立ち上げ、途中で自然消滅することの事業インパクトは10
  • プロジェクトのアイデアを出すことの事業インパクトは5
  • 誰かに対する批評・非難による事業インパクトは-500

といったイメージです。

 

アイデアだけでは事業インパクトは起きない

なぜ、アイデアだけでは事業インパクトが極めて少ないかというと、具体的な形にならないからです。

アイデアを形にするためには、モチベーションが必要です。

では誰がアイデアを形にするためのモチベーションを持っているのかというと、アイデアを思い付いた人です。

「君のアイデアは素晴らしいね!代わりに私が実現しよう!アイデアが実現して成功したら、あなたを褒め称えよう!」ということは、なかなかありません。

自分で思い付いたアイデアは、自分自身で形にする必要があります。

 

アイデアを形にし、プロジェクトを完遂するためには忍耐力と時間をひねり出すスキルが必要

アイデアを具体的な形にするのは、とんでもなく面倒くさい作業です。

アイデアの段階では素晴らしかった着想が、現実に落とし込む中で、とてつもなく不恰好で手間のかかる産物だと分かってきます。

アイデアを具体的な形にするためには、当初思い描いていた全体像のパーツから優先順位を決め、本当に必要最低限なもの(全体の5〜10%程度)だけを選びだします。

そして、泣く泣く他の要素(全体の90〜95%程度)を諦めます。

「あのプロダクトはスカスカだ!」「あの作品はオモチャみたいだ!」という批評が的外れなのは、その批評をしている人が実際にそのサービスを創り上げたことがなく、どのくらい時間がかかり、どのくらいリソースがかかるのかということを分かっていないからです。

世の中の大半のサービスは、泣く泣く絞り込まれた最低限の要素と、非常なまでの優先順位で創り上げられています。

 

本当に必要最低限のものに絞ったとしても、考えることやリサーチすること、詳細を決めることや手を動かすことは山ほどあります。

それゆえ、アイデアを形にするためには時間が必要です。

私自身、リーダーになったり、マネージャーになったり、事業長になったり社長になったりすると時間が出来るのかと思っていましたが、役職が上がれば上がるほど時間が無くなっていきます。

なぜなら役職が上がれば上がるほど関係する人の数が増えていくため、自分の仕事に時間が取れなくなるからです。

「マネジャーがいつも時間に追われている実態は、多くの研究によって一貫して明らかにされている。たとえば、平均して48秒で別の仕事に移らなくてはならない工場の現場監督、中断なしに30分以上同じ仕事に集中できるときが平均して二日に一回ほどしかないミドルマネジャー、すべての活動の半分が9分以上続かないCEO、といった事例が報告されている。「・・・40件を超す研究によれば、『企業幹部はいつも全力疾走で駆け回っている』かのように見える」という指摘もある・・・私が『マネジャーの仕事』で取り上げたCEOたちも、いつも時間に追われていた。朝オフィスに出勤してから夜に退社するまで、ひっきりなしに電話がかかってきたり、手紙が届けられたりする。コーヒーブレイクや昼食の時間も仕事から逃れられない。一瞬でも仕事の手が空けば、すかさず部下がなにごとかを持ち込んでくる。あるマネジャーの言葉を借りれば、 マネジメントとは「いまいましいことが次々と降りかかる」仕事なのだ・・・マネジャーが勤務時間内に処理しなければならない仕事の量は、あまりに膨大だ。おまけに、シニアマネジャーは、しばしば勤務時間外もマネジャーの役割から解放してもらえない。また、職場に懸案事項があると、夜間や休日もその問題が頭から離れない」〜マネジャー論 ミンツバーグ〜

 

「そうして一人前のマネジャーとなったら・・・現実に直面させられることになる。マネジャーの正規の執務時間は、おおむね他人のためのものだ。組織の中のだれかが彼と連絡をとる必要がある時には、いつでもそれに応じられなくてはならない。公式、非公式の会議、そして同僚や部下との一対一の話し合いは際限のない緊張を彼に強いるだろう。人びとは彼のところへ、さまざまな要求、苦情、問題を持ってくるだろう・・・しかし、また、机の上には「宿題」もあるのだ・・・ほかのみんながいなくなってしまったその時間こそ、自分自身の仕事、自分自身の思考ができる時間だ・・・真のリーダーで・・・・自分に課された宿題をやらない人間には、私は会ったことがない。本当に、ほかに道はないのだ」〜プロフェッショナルマネジャー 58四半期連続増益の男 ハロルド ジェニーン〜

逆に言えば、いつでも「今この瞬間」こそが、自分にとって一番時間があるタイミングと言えます(実際には殆どの余裕がなかったとしても)。

だからこそ、時間をひねり出す必要があります。

これは「ひねり出す」という表現がふさわしく、なんとか合間をぬって時間を捻出するしかありません。

カレンダーにあらかじめ時間を確保し、通常業務のスピードを上げて、スマホや娯楽を遮断するしかないのです。

時間は「なんとか確保しよう」としなければ、絶対に確保出来ません。

 

プロジェクトを応援する人は素晴らしい

時間をひねり出してプロジェクトを立ち上げ、ハードに考えて悪戦苦闘の元に「形」を作り、改善を続けていくことは、とても骨が折れることです。

そんなプロジェクト遂行者を応援してくれる人は、チームにとって、とてもありがたい人です。
自ら「こんな方法もあるよ」「こんなニーズがあるよ」と情報提供をしてくれたり、応援してくれることは本当に素敵なことです。

チームへの献身性が高い人は、本当に素晴らしい存在です。

悲しいのは、プロジェクト遂行者を冷たい目で見たり、プロジェクト遂行者を
「誰々は分かっていない」
「誰々はこんなことも知らない」
「誰々は楽をしている」
「誰々は能力が低い」
と批評することです。

人に対する批評はとても楽で、死ぬほど気持ちが良いものです。

人に対する批評は自分をかしこく見せ、万能感や正当性を与えてくれるようにも見えます。

しかし人に対する批評は、プロジェクト立ち上げのハードルを高くし、チームの熱量を下げ、挑戦の気概を無くし、チームをネガティブな無気力にいざないます。

人に対する批評は、事業インパクトが無いどころか、とてつもなく有害です。

こちらから情報提供しないのであれば、相手が知らないのは当たり前の話です。

もし仮に、プロジェクトのもっと良い実現方法に気付いたのであれば、気付いた人自身がプロジェクト遂行者に直接質問やアドバイスをし、実際に手助けするべきです。

応援や手助けが出来ないのであれば、自分の仕事に集中して、他の人のプロジェクトには口出ししないことが求められます。

 

プロジェクト責任者になるために

プロジェクトは多岐に渡ります。

誰でも、プロジェクトの責任者になれる可能性があります。

プロジェクトの責任者は、指名を受けるものではなく、自ら手を上げるものです。

プロジェクトを遂行するためには、下記のようなステップが理想的です。

  • アイデアを思い付く
  • プロジェクトの企画書を作る
  • 企画書に「解決すべき課題」「ユーザーストーリー」「企画概要」「プロジェクト成功を定義する数値」「収益計画」「体制」「スケジュール」「リカバリープラン」「撤退ライン」「リスク」を盛り込む
  • 企画書を上司やマネージャーにプレゼンしてフィードバックをもらう
  • プロジェクト参加者を決める
  • 定例MTG(週に1回)をセットして、プロジェクトの進捗状況をモニタリングする、各自の次回までの宿題を決める
  • プロジェクトで上手く行っていないことを検知し、改善する
  • プロジェクトの振り返りを毎月行う

アイデアを形にするためには、絶対に企画書が必要です。

企画書が無ければ、MTGをしても何も形になりません。

企画においては、相談よりも前に「企画書」が必要です。

 

企画書の中で特に骨が折れるのが「プロジェクト成功を定義する数値」の設定です。

プロジェクト成功を定義する数値の設定を行うためには、まず実態数値の把握を行わないといけません。

実態数値の把握を行うためには、計測に関するスキルが必要です。

計測に関するスキルが不足している場合、計測が得意な人に協力してもらうと良いでしょう。

 

計測が終わったら「プロジェクト成功を定義する数値」を量・質共に設定します。

この数値の設定も、まずは自分で形にする必要があります。

数値が無ければ、MTGをしても何も形になりません。

 

企画を作るコツは「能力や専門分野が違う人とペアで企画を作る」ことです。

自分一人では、企画の視点が狭くなってしまいます。

最初の企画書が出来た段階、フィードバックをもらう段階で、積極的に自分とは違う専門分野、専門知識を持つ人に「自ら」働きかけることが肝要です。

 

アイデアだけでは意味はありませんが、アイデアが全ての出発地点であることは間違いありません。

アイデアは問題意識がプラスに変わったものと言えます。

アイデアに、忍耐力と時間をひねり出すスキルが加われば、誰しもが凄まじい事業インパクトを生み出せるのです。